今回の記事では、
- 一人親方が建退共に加入する方法
- 加入した場合の月々の掛け金が経費となるのか?
- 辞退する場合の理由
- 加入しない場合の理由の書き方
などについて解説しています。
建退共とは?
建退共とは建設業退職金共済制度の事で、国が運営している退職金制度です。
主な特徴として
- 国が運営している
- 建設産業全体が適用対象
- 掛金は事業主が負担
- 共済手帳に証紙の貼付する
というものが挙げられます。
建退共はどうして国が運営しているのか?
他の産業で働く労働者は基本的に同じ事業所で継続して働いていて、退職金もその事業所ごとに支給を受けています。
ですが、建設業で働く人達は現場や事業所が頻繁に変わることが多いので、事業所ごとの退職金の支給対象となりにくいです。
そこで、国が建退共という制度を設け、事業所ごとではなく、建設産業全てが制度の対象として立ち上げたわけです。
建退共によって建設業で働く労働者は共済手帳の交付を受けていれば、いつ・どこの現場・事業所で働いても、事業主や元請に証紙を貼付してもらい、働いた日数に応じた掛金をきちんと加算して、退職時に退職金の支給対象とすることができる仕組みになっています。
建退共で退職金はいくらもらえるの?
適用対象期間(働いた日数)が長いほど退職金額の計算には有利になります。
現時点(2021年5月)での運用利回りは3.0%となるので、以下のように長ければ長いほど退職金額が増えることになります。
掛金納付年数 | 掛金総額 | 退職金額 |
5年 | 390,600 | 410,781 |
10年 | 781,200 | 945,903 |
15年 | 1,171,800 | 1,572,816 |
20年 | 1,562,400 | 2,256,366 |
25年 | 1,953,000 | 3,029,754 |
30年 | 2,343,600 | 3,902,745 |
35年 | 2,734,200 | 4,898,775 |
40年 | 3,124,800 | 6,036,723 |
40年かけると、600万円の退職金が受け取れますが、支払う掛け金は310万円強です。
ほぼ倍になって返ってくる計算です。
ちなみにですが、2021年10月1日から建退共の日額掛け金を、310円から「320円」に引き上げ、予定運用利回りは、3.0%から「1.3%~1.5%」にする、という話が出ています。
運用利回りが半減するので、「建退共大丈夫かしら?」という感じです。
建退共のメリット・デメリット
国の建設業労働者向けの建退共ですが、メリットは少ない掛け金で大きなリターンが得られるということにつきます。
逆にデメリットは特にないと思います。
建退共手帳に証紙の貼付という面倒なところはありますが、自分で掛け金を負担することもないので、損をするところはないでしょう。
一人親方も建退共で退職金がもらえます
もちろん一人親方でも退職金をもらえます。
建退共制度は本来、建設業の事業主が加入し、建設業の現場で働く労働者を被共済者として、退職金が支払われるものですが、一人親方の場合は、あるときは事業主として経営者の立場に立ち、またあるときは技能労働者として雇用されることがあります。
建退共制度では、そんな一人親方でも加入できる制度を設けています。
一人親方が建退共に加入する方法
一人親方の場合は通常と加入方法が異なります。
一人親方が集まって、任意組合を結成し、この組合を便宜上事業主として建退共と退職金共済契約を締結し、一人親方である組合員をその組合の労働者として加入させます。
もともと大工組合、左官組合などの組織があれば、その組合を任意組合として建退共と退職金共済契約を締結することもできます。
ただ、ちょっと任意組合を作るのはハードルが高いな、ということであれば、既に建退共に加入している任意組合に加入して、建退共制度の適用を受けることもできます。
この方が簡単かもしれません。
加入可能な任意団体は建退共の各支部に確認すれば教えてもらえると思います。
建退共の各支部
https://www.kentaikyo.taisyokukin.go.jp/shozaichi/shozaichi03.html
建退共の掛け金は経費扱いにできるのか?
普通の会社であれば、雇用している労働者の退職金は経費として計上できます。
ですが、一人親方の場合は、任意組合から共済証紙の貼付を受けるため、掛け金は結局自ら負担することとなりますが、事業主が自分に掛けたものとして、必要経費とすることはできません。
建退共の辞退理由。加入しない理由とは?
建退共は国が運営している制度ということもあり、公共工事では加入状況のチェックが入ります。
ただし、理由があって建退共に加入していない場合もあります。
その際は建退共の証紙の交付を辞退するわけですが、その際の辞退する理由として使えるのは以下くらいでしょう。
- その他の退職金制度に加入している
- 本人に入る意思がない
建退共制度は任意加入の制度ですので、加入しなくても罰則はないはずです。
が、公共工事の場合は、それが通るかは発注者や元請次第、ということになります。
そのため、「本人に入る意思がない」とした場合に何か言われる可能性はあると思います。
建退共の辞退理由については以下の記事でも詳しく説明しています。
一人親方の建設業退職金共済制度についてのまとめ
- 運用利回りは3.0%(2021年10月から1.3%~1.5%予定)なので、長期間かけると結構増える?
- 一人親方でも加入可能
- 一人親方の場合は任意組合経由での加入
- 一人親方の建退共掛け金は経費にはならない
- 建退共を辞退する場合の理由は他の退職金制度加入か、加入意思がない、とする
建退共は建設業の労働者に対してよかれと思って作られた制度ですが、思うように普及していない、というのが実際なのではないでしょうか。
特に一人親方の場合は、仲間同士で任意組合を立ち上げるか、すでにある任意組合に入れてもらうかしないといけないわけで、「そんな面倒なことします?」と言われてしまえばそれまでかと。
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