作業員名簿は2020年10月1日の業法改正により、施工体制台帳への添付が義務付けられました。
一人親方だと「そんなもの今まで提出したことがない」という方もいると思います。
そこで、今回は一人親方の場合の作業員名簿の書き方を説明します。
2021年の改訂版に対応した作業員名簿の書き方やテンプレートのダウンロードについても説明しています。
2021年 最新版の作業員名簿の書き方、記入例
作業員名簿とは、一言で言えば現場にどんな人が入っているのかを把握するために作成する書類の事です。
作業員の個人情報や社会保険加入の有無、保有している資格などを一覧にして元請や上位下請会社へ提出します。
作業員名簿と言えば、全建統一様式の第5号がデファクトスタンダード(標準書式)のようになっていますが、この作業員名簿は項目数がかなり多く作成するのが大変です。
でも、2021年3月に国交省がアップロードした作成例では、必要最小限の項目になっています。
このページではその必要最小限の項目の作業員名簿の書き方、記入例をご紹介しています。
工事名称と所長名
事業所の名称・現場ID:事業所の名称とは工事現場の名称です。「〇〇新築工事」などと記載します。なお、現場IDというのは建設キャリアアップシステムに現場を登録した際に割り当てられるIDの事です。
これは、元請でなければ分かりません。
所長名:通常は元請の現場代理人の名前になります。これも元請に確認しないとわかりません。
日付
作業員名簿にはなぜか日付記載箇所が2か所あります。
タイトルの下の日付は、作業員名簿の「作成日」、右手は「提出日」となります。
通常は同日で問題ないと思いますが、元請、上位下請によってはブランクで提出するように指示してくる場合もありますので、注意してください。
一次下請会社の情報
一次会社名・事業者ID:一次下請け会社の会社名と建設キャリアアップシステムに登録している場合の事業者IDを記載します。
自分が一次下請であればここに一人親方としての氏名や屋号を記載します。
二次以降の下請会社の情報
二次下請以降の会社名と事業者IDを記載します
自分が何次か分からない場合は、〇次のところはブランクにして提出するのが良いと思います。
作業員の情報
作業員(一人親方の場合は自分)の情報を記載していきます
ふりがな、氏名、技能者IDと職種、記号、生年月日と年齢です。
技能者IDとは建設キャリアアップシステムに技能者登録をすると割り当てられる14桁のIDです。建設キャリアアップシステムに登録していない場合はブランクでOKです。
職種:とび工、土工、鉄筋工など、この工事での職種を記載します
※:自分の属性の記号を記載します。記号は、以下に該当するものがあれば記載します
- 現…現場代理人
- 作…作業主任者
- 女…女性作業員
- 未…18歳未満の作業員
- 主…主任技術者
- 職…職 長
- 安…安全衛生責任者
- 能…能力向上教育
- 再…危険有害業務・再発防止教育
- 習…外国人技能実習生
- 就…外国人建設就労者
- 1特…1号特定技能外国人
社会保険の情報
一人親方の場合に結構困るのが社会保険の書き方。
通常は以下の通りとなります。
- 健康保険:国民健康保険
- 年金保険:国民年金
- 雇用保険:適用除外
右手は番号を入力する欄ですが、健康保険、年金保険の番号は個人情報保護の観点から記載が不要というかNGになっています。
また、一人親方の場合、雇用保険は適用除外となりますので、右欄すべては斜線で消しておけばOKです。
建退共、中退共の加入状況
建退共と中退共の加入有無を有、無で記載します。
一人親方でも建退共に加入することはできますので、加入している場合は「有」と記載します。
一人親方の建退共加入についての詳しい話はこちらの記事をご覧ください。
一人親方が建退共に加入する方法。経費になるのか?辞退する場合の理由
中退共(中小企業退職金共済制度)は通常加入していないはずですので、「無」と記載します。
教育・資格・免許の保有状況
教育、資格、免許の項目は任意となっています。
ただし、発注者や元請によっては記載するように言ってくることもありますので、その際は記載しなければなりません。
また、記載した場合はその資格等を保有していることを証明するための証明書を、あわせて提出するように言われると思います。
どこに何を記載すれば良いのか分からない場合は、作業員名簿の下部にある以下の注意事項を参考にしてください。
安全衛生に関する教育の内容(例:雇入時教育、職長教育、建設用リフトの運転の業務に係る特別教育)については「雇入・職長特別教育」欄に記載。
作業員名簿の注釈から引用
(注) 10. 建設工事に係る知識及び技術又は技能に関する資格(例:登録○○基幹技能者、○級○○施工管理技士)を有する場合は、「免許」欄に記載。
入場年月日、受入教育実施年月日
現場への入場日と、受入教育実施年月日を記載します。
作業員名簿などの安全書類は現場での工事が開始される前に提出するのが基本です。
そのため、入場年月日は現場が始まってからでなければ記載することができませんので、ブランクで大丈夫です。
受入教育実施年月日については、作業員名簿の提出までに実施している場合は記載します。
一人親方の作業員名簿の書き方、記入例のまとめ
一人親方だからと言っても、雇用保険が適用除外となること以外、作業員名簿の書き方については、大きく変わるところはありません。
2020年10月の業法改正により、施工体制台帳への記載が義務付けられましたが、逆に必要項目も明示されたため、以前の作業員名簿よりも作成は楽になりました。
書き方も難しくありませんので、さっと作って提出するようにしましょう。
作業員名簿のダウンロード
作業員名簿は上記ご紹介した国交省のサイトからもダウンロードが可能ですが、以下のサイトでもダウンロードできます。
このサイトでは、全建統一様式や国交省の作成例を基本とした書式を無料でダウンロードできるだけでなく、書き方、記入例なども紹介されています。
業界の動向もチェックされていて最新の書式がダウンロードできますので、建設業で働いているのであればお気に入りに入れておいて損はないです。
参考情報
参考情報として、作業員名簿の下部に記載されている注意事項を掲載しておきます。
(注) 2. 作業主任者は作業を直接指揮する義務を負うので、同時に施工されている他の現場や、同一現場においても他の作業個所との作業主任者を兼務することは、法的に認められていないので、複数の選任としなければならない。
(注) 3. 各社別に作成するのが原則ですが、リース機械等の運転者は一緒でもよい。
(注) 4. 資格・免許等の写しを添付すること。
(注) 5. 健康保険欄には、左欄に健康保険の名称(健康保険組合、協会けんぽ、建設国保、国民健康保険)を記載。上記の保険に加入しておらず、後期高齢者である等により、国民健康保険の適用除外である場合には、左欄に「適用除外」と記載。
(注) 6. 年金保険欄には、左欄に年金保険の名称(厚生年金、国民年金)を記載。各年金の受給者である場合は、左欄に「受給者」と記載。
(注) 7. 雇用保険欄には右欄に被保険者番号の下4けたを記載。(日雇労働被保険者の場合には左欄に「日雇保険」と記載)事業主である等により雇用保険の適用除外である場合には左欄に「適用除外」と記載。
(注) 8. 建設業退職金共済制度及び中小企業退職金共済制度への加入の有無については、それぞれの欄に「有」又は「無」と記載。
(注) 9. 安全衛生に関する教育の内容(例:雇入時教育、職長教育、建設用リフトの運転の業務に係る特別教育)については「雇入・職長特別教育」欄に記載。
(注) 10. 建設工事に係る知識及び技術又は技能に関する資格(例:登録○○基幹技能者、○級○○施工管理技士)を有する場合は、「免許」欄に記載。
(注) 11. 記載事項の一部について、別紙を用いて記載しても差し支えない。
一人親方は労災保険の加入を忘れずに
なお、一人親方であれば労災保険に加入することを忘れないでください。
個人事業主だから労災保険に加入できないと思っている一人親方もいるようですが、特別加入制度がありますので、労災に加入することができます。
建設現場などの危険を伴う職場ではケガなどのリスクは大きいです。
ケガをして1日でも休むことがあれば、サラリーマンと違ってその分収入が減ってしまいます。
労災の休業補償がないと収入がゼロになります。
なお、労働組合等の特別加入労災だけでは補償金額が不安ですし、もし、それなりの金額の休業補償をつけようとすると保険金が高くなってしまいますので、以下の記事で紹介しているものを活用してくださいね。
知らないと損をする一人親方の特別労災(休業補償)を安くする方法
コメント