一人親方は個人事業主の一つの形態なんですが、その違いは?と言われるとなかなか説明するのが難しいです。
ほぼ一緒でしょ、ということでも大きな間違いではないのですが、一人親方には個人事業主と明確に異なる部分があります。
今回はその違いを解説します。
一人親方と個人事業主の違いとは?
一人親方は
「労働者を使用しないで、特定の事業を常態的におこなう」
人のことを言います。
厚生労働省が出している「特別加入のしおり」で「一人親方」の定義は上記のとおりとされています。
一方、個人事業主は、法人化せずに個人の資格で単独に事業を行うもので、要は
「税務署に個人で事業をおこなっていると申告している人」
のことを言います。
なお、一人親方も、税務署に個人で事業をおこなっていると申告している人は、個人事業主の一つとなるのですが、労働者を使用する、しないで変わってくると考えてよいと思います。
ちなみにフリーランスという言葉も最近は聞くようになりましたが、フリーランスとは
特定の企業や団体、組織に専従しておらず、業務委託により自らの技能を提供することにより社会的に独立した個人事業主
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B9
と、なんだかふわふわした感じですが、一人親方とはちと違うようです。
一人親方と判断する基準とは?
さて、困るのが、一人親方の判断基準です。
この判断は以下を参考にすればよいと思います。
- 労働者を使用していない
- 常態として単独で請負の事業を行っている
時々、作業員名簿に一人親方なのに、他の作業員が記載されている場合がありますが、その場合は一人親方ではなく、個人事業主ということになります。
ただし、応援的な作業員であれば、以下の条件で雇い入れることが可能です。
- 年間を通して100日未満の労働日数
- 1週間の労働時間が20時間以内の労働時間
- 月30日未満の労働日数
しかし、ここまで確認するのはなかなか大変ですね。
一人親方は特別労災加入保険がある
一人親方は個人事業主でもあり、あまり、一人親方と個人事業主についての違いを意識する必要はないのですが、特別労災への加入という点で大きく違います。
一人親方は個人事業主とは異なり、「一人親方労災保険」への特別加入が可能です。
一人親方は、ケガのリスクが他の業種より高いこともあり、特別に労災保険への加入が認められています。ただし、一人親方労災保険に加入するためには、一人親方労災団体を通じて申し込みをしなくてはなりません。
一人親方と個人事業主の保険の違い
一人親方と個人事業主では社会保険などの保険加入に違いがあります。
一人親方 | 個人事業主 | |
社会保険(厚生年金・健康保険) | 加入できない | 5名以上の従業員を雇用している場合に加入 |
雇用保険 | 加入できない | 加入できない |
個人事業主でも4名以下の従業員であれば社会保険の加入は必要ないので、一人親方と同じ状況になります。
一人親方は建設業だけじゃない!
一人親方というと建設業、特に大工さんを思い浮かべる方が多いと思いますが、実は建設業に限定されたものではないのです。
一人親方として認められるのは以下の9業種です。
- 自動車を使用して行う旅客若しくは貨物の運送の事業又は原動機付自転車若しくは自転車を使用して行う貨物の運送の事業(個人タクシー業者や個人貨物運送業者など)
- 土木、建築その他の工作物の建設、改造、保存、原状回復(注)、修理、変更、破壊もしくは解体またはその準備の事業、大工、左官、とび職人など)
注)除染を目的として行う高圧水による工作物の洗浄や側溝にたまった堆積物の除去などの原状回復の事業も含みます - 漁船による水産動植物の採捕の事業
- 林業の事業
- 医薬品の配置販売(医薬品医療機器等法第30条の許可を受けて行う医薬品の配置販売業)の事業
- 再生利用の目的となる廃棄物などの収集、運搬、選別、解体などの事業
- 船員法第1条に規定する船員が行う事業
- 柔道整復師法第2条に規定する柔道整復師が行う事業
- 改正高年齢者雇用安定法第10条の2第2項に規定する創業支援等措置に基づき、同項第1号に規定する委託契約その他の契約に基づいて高年齢者が新たに開始する事業又は同項第2号に規定する社会貢献事業に係る委託契約その他の契約に基づいて高年齢者が行う事業
建設業以外だとなんとなく違和感がありますが、個人タクシーのドライバーさんなども一人親方になるのです。
一人親方と個人事業主の違いまとめ
以上が一人親方と個人事業主の違いについての解説です。
ですが、正直、一人親方と個人事業主の違いってちょっと分かりづらいですし、ここを明確にする必要性もあまり感じないです。
おそらく困るのが、一人親方として現場に入場しているのに、作業員名簿に作業員が書かれているパターンかと。
労働者を使用していれば、一人親方ではなく、個人事業主となる場合があるので確認が面倒ですね。
さらに従業員が5名以上となれば社会保険への加入状況の確認も必要となります。
作業員名簿に作業員が書かれている場合
- 一人親方の場合→一時的な労働者
- 個人事業主の場合→恒常的な労働者
という判断になるのかと思います。
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